

こんにちは、ばいんいく堂鍼灸院です。
「夫婦生活は朝と夜ならどちらの方が妊娠しやすいですか?」とご相談者様に尋ねられる事があります。 エビデンスを調べてみたところ、精液所見が朝がよいという論文があることがわかりました。 何を調べた論文かというと、体内時計のサーカディアンリズム(概日リズム)とサーカニアルリズム(概年リズム)が精液所見に影響を与えるかどうかを調べた報告です。 ≪論文紹介≫
『精液所見は午前・午後、季節で変わるのか?』
精子濃度、総精子数、正常形態が最も高く、いずれも統計的に有意でした。 進行運動率は時間による変化はありませんでした。 季節変動については、精子濃度と総精子数は春に有意な増加が見られ、夏には有意な減少が認めました。正常形態率が最も高かったのは夏でした。進行運動率については、有意な季節変動は認めませんでした。 結論: 精液所見は、体内時計のサーカディアンリズム(概日リズム)とサーカニアルリズム(概年リズム)に影響を受けます。 1994年-2015年に、スイスのチューリッヒ大学病院で採取された7,068人の男性(平均年齢は37±7歳:18~69歳)の12,245個の精液サンプル(除外:(1)化学療法・放射線療法前後、(2)精管切除後、(3)TESE/MESA、(4)無精子症)を、精子濃度、総精子数、進行性運動率、正常形態を概日変化と季節変化を後方視的に検討しました。 精液採取は病院内もしくは自宅採取し一時間以内に持参してもらっています。 統計的評価にはMann-Whitney U検定と重回帰分析を用いています。 結果: 早朝7時30分以前に採取した精液サンプルでは、
『人工授精(IUI)は43歳以上の女性にとって治療可能な選択肢ですか?排卵誘発プロトコルと精子の由来による分析』(論文紹介)』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33107579/
主要項目は、人工授精の 1 周期あたりの妊娠数と出生数でした。フィッシャー厳密分析およびカイ二乗分析を実施しました。
結果:
この施設で行った9,334周期の人工授精のなかで、325回の人工授精(3.5%)は、受精時年齢43歳以上の女性(43.6±0.8歳、範囲43~47歳)を対象としていました。
話は今回の題材に戻りますが精子が胚の発生に影響を与えるメカニズムについては、まだ不明な点が多くあります。
受精後3日後の8細胞期付近でzygotic expressionが起きて、ここから父型の遺伝子発現が主に動き始めます。
よって父型の遺伝子にダメージが大きいと、胚の発生に後半に影響を与えるとされています。
最近のメタアナリシスでは、精子のDNAフラグメンテーションが増加すると胚質の低下、臨床的妊娠率の低下、流産率の上昇、および反復流産との関係が報告されています。
≪論文紹介≫
異なる年齢層の女性を対象に、精子DNAフラグメンテーションが生殖補助医療の臨床成績に及ぼす影響を検討することを目的としています。
2017年6月から2019年12月の間にICSIを受けた540組のカップル、卵巣刺激はFSHアンタゴニスト周期17mm以上3個以上になった段階でrhCG投与し35時間後に採卵を実施しました。
体外受精周期を母体年齢に応じて3つのグループに分けた:36歳未満(n=285)、37-40歳(n=147)、41歳以上(n= 108)。
精液サンプルは、精子クロマチン分散試験を用いて精子DNAフラグメンテーション(SDF)を評価し、年齢層ごとに、SDF指数に応じて、低断片化指数(<30% SDF)と高断片化指数(≧30% SDF)に分けました。
主な評価項目は着床率、妊娠率、流産率としました。
結果:
母体年齢が36歳以下および37~40歳の場合、<30% SDFまたは≧30% SDFの体外受精周期では、検査結果および臨床結果に有意な差は認められませんでした。
母体年齢が40歳以上の場合、≧30% SDFを用いた体外受精周期では、<30% SDFと比較して、高品質の第3日目胚(54.4%対33.1%)の低下、胚盤胞発育率(49.6%対30.2%)の低下、妊娠率(20.0%対7.7%)および着床率(19.7%対11.9%)の低下、流産率(12.5%対100.0%)の増加が有意に認められました。
結論:
精子DNAフラグメンテーションが高い精子を用いた顕微受精を用いた体外受精は、母体年齢があがると共に着床率、妊娠率の低下、流産率の上昇につながることがわかりました。
(注)精子のDNAフラグメンテーションはSCDテスト(Halosperm; Halotech社: 200 sperm count)を用いて、ICSIに提供された精子サンプルと用いて行っています。良好分割期胚の定義:
day2: 4cell,day3: 8-10cell,<15% fragmentationなど
妊娠率:胚移植回数あたりの心拍がみえた数
着床率:胚移植胚数あたりの心拍がみえた数
流産:20週以前の流産と定義
≪見解≫
母体年齢が高い女性の卵子はDNAフラグメンテーションが高い精子を修復する能力が低く、生殖医療成績が低下するとしています。
母体年齢の上昇が卵子のメッセンジャーRNAの蓄積量やDNA repair activity( DRA)の減少する先行研究と一致する結果となっています( Hamatani Tら. Hum Mol Genet 2004)。
胚発生の最初の24時間(S期)の頃には、母型・父型の遺伝子に修復すべき何十万ものDNA損傷が存在するとされています。
その場合、卵子は