「鍼灸師が診るポイント:身体の内と外から健康を見極める中医学の視点」

中医学の基本理念:体内と体外の一体化

中医学では、人体の内部環境(陰気)は、外部環境(陽気)と密接に結びついていると考えます。

自然環境が私たちの体に影響を与えるように、五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎、および胆・心包・胃・大腸・膀胱・三焦)の機能も、季節や気温、湿度などの外的要因に左右されます。

こうした視点をもとに、患者の体調を見極め、最適な治療法を選択していきます。

八綱弁証で患者の状態を把握する

中医学では、病気の診断と治療方針を決めるために、「八綱弁証」と呼ばれる4つの主要な視点を用います。

1. 陰陽(イン・ヨウ)

患者の体質や症状が陰か陽かで、総括的に判断します。

2. 裏表(リヒョウ)

病気が体のどの部位に存在しているかを示します。
• 表:皮膚や筋肉など、体の表面の異常
• 裏:内臓や深部の異常

3. 寒熱(カンネツ)

病気の性質や原因を指し、冷えや熱の偏りがあるかを診ます。
• 寒:冷えが原因の病気や、寒がりな体質
• 熱:熱がこもる症状や、体温が高い状態

 

4. 虚実(キョジツ)

病気の強弱や、患者の体力の有無を表します。
• 虚:体力や気力が不足している状態
• 実:症状が強く、エネルギーが余分にある状態

 

これらの視点を組み合わせ、最終的に「陰陽」でまとめていきます。

例えば、WHOも認めているような、気が不足して体内にあるべきものが外へ出てしまう症状があります。これには胃下垂、脱肛、子宮脱、脱腸などこういった症状を中医学では「気虚」と呼び、気が不足している証拠と見なします。

このような場合、気虚を診断し、気を補う経穴を刺激することで体の内部から治療を行います。この方法を「内病外治」といい、体外から刺激を与えて内臓の機能を改善する技術です。また、逆に、内臓の機能を調整して外部の疾患を治療することもあり、これを「外病内治」と呼びます。

次回の記事では、鍼灸で使われる「四診法」について!

患者の状態をどのように把握していくのか、紹介します!

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました